Concept
このウェブマガジンは、アートや人類学について考える研究会からはじまりました。慌ただしいコロナ禍でこぼれ落ちていく思いや活動をより柔軟に残すために、メディアを作ろうと企画されました。
既にあるメディアや研究会と比べながら、私たちが大切にしたいことについて話し合った結果、満場一致でそれだ!となったのは、「しばりがないこと」でした。特定のジャンルや形式に固定してしまわないこと、不定形で未確定な部分を残した表現を大切にしたい。なかでも、次の3点を重視して編集します。
メディア=かたちにこだわらないこと
活動するシーンを越えたものにすること
表現するジャンルを問わないこと
〈-oid〉とは
私たちが“屋号”として掲げる〈-oidオイド〉ということばは、単語の後ろにつけて、「〜のようなもの」や「〜に似たもの」を意味する接尾辞です。たとえば、アンドロイドandr-oidやヒューマノイドhuman-oidは、文字通りいえば「ヒトのようなもの」という意味です。
ふつうは独立して使わない〈-oidオイド〉ということばを、「しばりのなさ」を象徴させる屋号として切りとりました。言語とイメージの“あいのこ”みたいな、〈-oid〉のデザイン性もおもしろい。
昨今とりわけウェブ上では、二者択一で感情に訴えることばばかりが飛び交いがちです。そのような“あれかこれか”の世界にあらがって、はっきりさせないことや、それ“らしい”こと、似て非なること、あらかじめ決められていないこと、未確定であることなどが入る余地を残した、「しばりのない」メディアとして、ウェブ上に小さな居場所をつくっていきたいと考えています。
〈-oid〉は、後ろにつけるだけで、本体を曖昧にしてしまう、自分勝手なところもなんだか可愛らしい。ことばや音やイメージを何かに与えると、見え方が少しだけ変わる。認識を変える小さなタネを保管する箱=マガジンです。
〈アート=する〉
編集部には、芸術学や文化人類学に関わる人たちがいます。人にまつわる色々について考え、表現について探求するとき、その範囲や思考や方法をできる限り「しばりなく」解放的に考えたい。
これを表すことばはなんだろう? ――思いついたのが、カタカナの「アート」ということば。
漢字で書いた「芸術」よりも、カタカナの「アート」がしっくりくる。アルスとかテクネーとか語源の多義性へ開かれている、なんて理由もさておき、「アート」と書いたときのある種のケーハクさを受け止めたい。時と場所を越えて人々がことばを変化させること、それ自体に向き合いたい。これをカタカナ表記に託しました。
もうひとひねり、「アート」を動詞のかたちにして〈アート=する〉とあそんでみました。artという英単語はふつう動詞にできないけど、それ自体に動きがあり、何かを動かすものとしての〈アートする〉。しばりのない開かれた思考を大切にして、人の営みに動きとあそびを与えたい。コピーにはこうした思いを込めています。
文責:小森真樹
Credit
編集 (2022年4月現在)
板久梓織、大津留香織、兼松芽永、小森真樹、田中理恵子、丹羽朋子、登久希子、同時代のアートと人類学研究会
※「同時代のアートと人類学研究会」は、若手研究者や現場実践者が集い、グローバル化以降の幅広いアートや表現活動について人文社会科学の観点から考える研究会です。本マガジンはここから生まれました。
謝辞
2022年度カルチュラル・スタディーズ学会若手研究会活動助成
サイト制作、ロゴデザイン
PORT
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