みんぱくで開催中の「ことば」をテーマにした展示。50名を超える分野の研究者やアーティストまでを含めた多角的な企画である。「ことば」を紹介する際に手話や点字に相当な厚みがあったのは、広瀬浩一郎さんを擁して昨年の「ユニバーサル・ミュージアム」展を成功させた流石のみんぱくである。
山城大督《Spatial Tone》
アーティストの山城大督は、立体性、音声と視覚メディア、物質と映像による多層性をふくめて「空間」をメディアとしてインスタレーション作品をつくってきた。そこにメッセージ性を排したポエティックな抽象を再現することで、「イメージ」をオーディエンスに伝えてきたが、本作もまた空間を素材に利用したものだ。
ことばの文法的構造をイメージに置き換えて再解釈し空間構成をしたのだろうか、抽象的な音像に加えて、一人掛けの椅子の羅列、直線的な羅列、会場となった地下のピロティには風が抜ける。風も鳴る。みんぱくの建築の壁面には、タイルがいくつかのパターンで貼られており、複層的なリズムがある。
黒川紀章の手になる昭和後期のモダニズム建築である。これと相まって、レトロとユニヴァーサルが同居する奇妙な空間が生まれていた。実際に座ることができる椅子や机など家具を持ち込むことで、人が座っていることもまた次元の異なる「意味」を与えていた。
(文・写真=小森真樹)
Homō loquēns「しゃべるヒト」
ことばの不思議を科学する
○開催概要
会期 2022年9月1日(木曜日)~11月23日(水曜日・祝日)
会場 国立民族学博物館 特別展示館
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 水曜日(※11月23日(水・祝)は開館)
解説言語 日本語、日本手話、英語
観覧料 一般880円、大学生450円、高校生以下および障がい者手帳をお持ちの方(付添者1名を含む)は無料
デザイナー Atelier 36(展示デザイン)、サトウデザイン、デザイン峠(グラフィックデザイン)