アートの根っこ―想像・妄想・創造・捏造を社会へ放つ
アート作品/活動は、人間と世界と社会の現状を照らし出し、その自明性を揺るがす。
その力が顕れている諸事例の考察から、社会的出来事としてのアートの源泉に触れる「アートの根っこ―想像・妄想・創造・捏造を社会へ放つ」が出版されました。
編集者である人類学者の青木惠理子さんをはじめ、社会学者、アクティビスト、アーティストたちによる応答と対話の共創がおさめられています。
…私たちはすべて相互に他者である。他者でありながら、あるいは他者であるからこそ、出会うことができる。これは、かつてもそしてこれからも変わらない普遍的な事態であろう。出会いは二者関係だけでなく、社会や共同体というネットワークや集合を生んできた。出会いの可能性は普遍的でも、出会いがどのような形になるかは、歴史的地政的影響がおおきいであろう。…中略…人々は知らぬ間にバラバラになり、同時に政治経済的格差が拡大している。このような時代的現状と複雑にからみあいながらアートは隆盛を見せている。そのような現状のなかで私たち執筆者が出会ったのは、他者との関係を大切にした暮らしに軸足をおいたアート的な活動とそれに携わる人たちだった。私たちの出会いを皆さんに伝えることができれば、本書は過分な目的を果たしたといえる。(「プロローグ」より)
<目次>
Prologue 他者たちの出会いとアート的なるもの(青木惠理子)
Chapter1 創ること、働くこと、そして棲まうこと ――知的障害者施設の挑戦――
Talk 障害のある人とともに社会を変える(岡部太郎)
Essay 労働と芸術が交わる地点(松本 拓)
Chapter2 インドにおける祝福と未来の招来
Talk ヒジュラの紐帯、生業、パフォーマンス――女神への献身と市民の人権――(山崎浩平)
Essay インドにおける表象と自己主張(舟橋健太)
Intermezzo Essay
潜在的なものを社会へ――井上葉子のアートアクティビズム――(青木惠理子)
Chapter3 共同妄想記憶のリアル ――地域で考え、創り、集う――
Talk 地域におけるリアル――記憶の捏造/創造――(白川昌生)
Essay 場所について(山田創平)
Chapter4 出会いの到来を待つ技法 ――日本・イタリア・精神障害・演劇――
Talk なれ合いを共感で内側から破る(くるみざわしん)
Talk 『外』とであうためのあわい――イタリアの地域精神保健と演劇実験室から――(松嶋 健)
Discussion 願う、待つ、出会う
(くるみざわしん・松嶋健・島すなみ・森越まや・広瀬隆士・村澤真保呂・青木惠理子・舟橋健太・松本拓・山田創平)
Essay 生の危機とアート(青木惠理子)
Epilogue ここからさき、アートはどこへ向かうのか?(山田創平)
青木惠理子 編集
定価 2300円+税
頁数 198ページ
発売 2022年3月30日
出版 晃洋書房
ISBN: 978-4771036192