気鋭の現代美術史学者であり、日本の現代美術批評でも活躍する加治屋健司による待望の単行本。アメリカ現代美術の作家論というだけでなく、1960年代アメリカの時代感覚や、デザインや建築など周辺芸術領域との関係性も射程に据えて「アメリカ美術」が立体的に浮かび上がる。様々な角度から楽しめそうな一冊。

著者からのコメント

これまでもっぱらモダニズムの観点から評価されてきたカラーフィールド絵画を、同時代の美術や文化の中で捉え直した研究です。第二次世界大戦後のアメリカ美術や美術批評に関心がある方に手にとっていただければ幸いです。

出版社による内容紹介

モダニズム美術批評からインテリア・デザインの広がりへ
ヘレン・フランケンサーラー、モーリス・ルイス、ケネス・ノーランド、ジュールズ・オリツキー、フランク・ステラら、20世紀半ばのアメリカで隆盛したカラーフィールド絵画の代表的画家5名を取り上げ、同時代の展覧会評や批評、美術動向に関する言説を丹念に読み解き、20世紀アメリカ文化との豊かな関係性を明らかにする。

目次

序論 新たな出発に向けて

第1章 モダニズム美術批評との関わり――教導から協働へ
1 カラーフィールド画家とモダニズム美術批評家
2 クレメント・グリーンバーグとマイケル・フリード
3 グリーンバーグの美術批評の変化

第2章 多様な美術批評による解釈――個展の展覧会評を中心に
1 ヘレン・フランケンサーラー
2 モーリス・ルイス
3 ケネス・ノーランド
4 ジュールズ・オリツキー
5 フランク・ステラ

第3章 六〇年代美術とともに――ポップ・アート、オプ・アート、ミニマル・アート
1 同時代の展覧会と批評
2 非コンポジションという共通の関心事
3 カラーフィールド絵画に対するミニマリストの関心

第4章 アメリカ文化の中で――商品デザイン、複製メディア、インテリア・デザイン
1 具体的なイメージや事物とのつながり
2 複製技術の経験との比較
3 インテリア・デザインとしての役割

結論 絵画の解放

あとがき
図版出典一覧
参考文献
索引

 

著者紹介

1971年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。表象文化論・現代美術史。東京大学教養学部卒業。ニューヨーク大学大学院美術研究所博士課程修了。PhD(美術史)。編著に『宇佐美圭司 よみがえる画家』(東京大学出版会、2021年)、共編著にFrom Postwar to Postmodern, Art in Japan 1945–1989: Primary Documents (New York: Museum of Modern Art, 2012)など。共著に『カラーフィールド 色の海を泳ぐ』(DIC川村記念美術館、2022年)、『地域アート 美学/制度/日本』(堀之内出版、2016年)、『マーク・ロスコ』(淡交社、2009年)、American Art in Asia: Artistic Praxis and Theoretical Divergence (London: Routledge, 2022)など。共訳にイヴ゠アラン・ボワ、ロザリンド・クラウス『アンフォルム 無形なものの事典』(月曜社、2011年)がある。

 

書誌情報

加治屋 健司『絵画の解放:カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』
東京大学出版会、2023年
人文科学 > 美学・芸術
2023/09/29発売
ISBN 978-4-13-016047-6
判型・ページ数 A5 ・ 324ページ
定価 6,270円(本体5,700円+税)