”本末転倒型”アートコレクティヴ Nadegata Instant Party としても活躍する中崎透の回顧展が水戸芸術館現代美術センターにて開催中。インタビューと制作物が交わり、地元の歴史と中崎の歴史が交わる展覧会。企画は2019年・2020年二期に分けて「アートセンターをひらく」を担当した竹久侑芸術監督による。


中﨑透「Poolside Snowman」展示風景 2021 撮影:門間友佑

●美術館による展覧会紹介
 本展は、ズレをテーマにゆるやかな手法で多様な作品を制作する、美術家・中﨑透による美術館初の大規模個展です。中﨑が近年展開する、インタビューをもとにした文学的インスタレーションに着目し、水戸および水戸芸術館を読み解く最新作を発表するとともに、代表作を含む旧作も取り上げ、中﨑透の全貌を紹介します。
 1976年、水戸で産声を上げた中﨑は高校時代に当館の活動に出会い、美術家を志す道に進みました。以来、鑑賞者として当館の企画展に触れ、2007年に水戸に拠点を移してからは美術家としても当館の活動に携わるようになりました。本展では、中﨑の出身地である水戸と中﨑にとって最も身近な美術館である当館をモチーフに、当地および当館にまつわる「もうひとつの物語」を、インタビューとリサーチを通して独自の視点から浮かび上がらせます。また、看板をモチーフとした初期作から、絵画やドローイング、過去のインスタレーションの再構成、カラーアクリルと蛍光灯による近年の立体作品まで、新旧の作品を織り交ぜることで中﨑の活動の軌跡をたどります。
 生い立ちから現代美術との出会い、そして美術家として活動する今へ——自叙伝的な色合いをも帯びた、出身地ならではの記念碑的な個展といえるでしょう。

●作家ステートメント
 物心ついた頃から、テレビのゴールデンタイムには時代劇「水戸黄門」が流れ、自分の住んでる街の名前がテレビに毎週映っているのは、子どもながらになんだか誇らしかったりした生粋の「水戸っぽ」であるわけだが、自分の祖父が実は水戸黄門だとずっと思い込んでいた夢から覚め、サンタクロースはいないという現実を知ったのは幼少の頃。水戸黄門が諸国漫遊というほど日本中を歩いたわけでもないらしいと知ったのはもう少し後のことだっただろうか。
 ただ、かといって物語から醒めるわけでもなく、そもそもがテレビの時代劇という虚構を前提としての娯楽であるように、芸術もまた物語や虚構と現実のはざまを絶え間なく行き来するなかで織り成された「越後のちりめん問屋」のようなものである。僕はたぶん虚実の隙間をうろうろと20年以上旅をしている。冗談のような嘘が、時として夢のような現実を生む力になることをきっと信じているんだと思う。

中﨑透

会場 水戸芸術館現代美術ギャラリー
開催日 2022年11月5日(土)~2023年1月29日(日)
開催時間 10:00〜18:00(入場は17:30まで)
休館日 月曜日、年末年始(2022年12月26日[月]~2023年1月3日[火]) ※ただし1月9日(月・祝)は開館、1月10日(火)休館
お問合せ 水戸芸術館(代表) TEL:029-227-8111
主催 公益財団法人水戸市芸術振興財団
助成 一般財団法人自治総合センター
協力 株式会社葵建設工業、トヨタカローラ新茨城株式会社、サントリーホールディングス株式会社
企画 竹久侑(水戸芸術館現代美術センター芸術監督)
展覧会ウェブサイト https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5186.html


中﨑透「看板屋なかざき」2014 撮影:小山田邦哉


中﨑透《地雷注意!》2002 撮影:柳場大